長期保有者の確信に揺るぎなし──ビットコインが心配無用なワケ【Krakenリサーチ】

長期保有者の確信に揺るぎなし──ビットコインが心配無用なワケ【Krakenリサーチ】

「2021年末の値動きに失望した」というビットコイナーは少なくないかもしれない。クリスマス頃には10万ドルの水準に到達するという予測があったが、実際にはその半分にも満たない4万6,150ドルで2021年を終了した。年間リターンはプラス58%で、主要暗号資産(仮想通貨)20種の中で3番目に悪いパフォーマンスだった。

今年に入っても、冴えない展開が続いている。4年周期で来ると言われる強気相場が終わったのではないか、と考えたくもなるだろう。ただ、今や欧米の機関投資家や大企業が投資するビットコイン。成熟度が増して以前よりもっと息の長い強気相場になっているという声も聞かれる。

クラーケン・インテリジェンスの分析を見ると、現在の相場について全体的に悲観するような結果は確認できなかった。今もなお、長期保有者の確信に揺るぎがないことが明らかとなった。

慎重な楽観論

今回、オンチェーン分析を使用した。アドレス数や取引量などブロックチェーンにおける取引記録を元に過去の傾向を分析して将来の動きを予想する手法である。注目したポイントは、ビットコインのSOPR(Spent Output Profit Ratio)、ホドル・ウェーブ(HODL Waves)、取引所の保有量の変化(Net Position Change)だ。

SOPRではビットコインの先行きにやや慎重な見方ができるが、ホドル・ウェーブと取引所の保有量の変化を見る限り、特段、警戒すべき売りは確認できなかった。

指標で見るビットコインの現状

SOPRは「売却価格(送金時)/購入価格(受金時)」で計算され、市場参加者がビットコインを売る際に利益(または損失)を出す状態かどうかを測る。SOPRが1を上回ること(SOPR > 1)は、保有者が利益を出せる状態であることを示す。

歴史的にSOPR> 1のとき、相場の天井が近いことを意味する。逆にSOPRが1を下回ることは売却したら損失を出すことになるため、ビットコインを売りに動く投資家が少なくなることを表す。SOPR = 1であるとき、ビットコインが購入時とほぼ同じ価格帯で推移しており、市場参加者は価格がどうなるか確信を持てない状態であることを意味する。

(出典:Kraken Intelligence, Coin Metrics「ビットコイン価格とSOPR」)

現在、ビットコインのSOPRは1をわずかに下回る水準で推移しており、ビットコイン強気相場終えんと解釈することもできる。ただ、歴史的に、SOPRが1付近まで低下した後で反発し、その後、相場も好転した実例が複数ある。

今後もしSOPRが1を回復すれば、年末の下落は一時的な調整であったと言えるだろう。逆に回復に失敗すれば、弱気相場のサイクルに入ったと考えられる。

ホドル・ウェーブは、少なくとも過去1年間移動しなかったビットコインの供給量全体に対する割合を示している。ビットコインを保有し続けるかどうかに関する投資家の心理状態を知るための手法であり、どのタイプの市場参加者(長期保有者、中期保有者、短期保有者)が売り圧力になっているのかを知ることができる。

(出典:Kraken Intelligence, Glassnode「ビットコイン価格とホドルウェーブ」)

現在のホドル・ウェーブを見ると、少なくとも1年以上移動していない長期保有者の確信に揺るぎがないことが分かる。今後さらに相場が低調になればホドル・ウェーブが下落トレンドになるかもしれないが、現状では強気派の波は終わっていないと考えられそうだ。

取引所の保有量を見ても、ビットコイン市場に異変は見られない。2021年6月から年末まで下落トレンドが続き、目をひくような売りは確認されていない。取引所が保有するビットコインが減少するということは、すぐに日本円など法定通貨に交換できるビットコインの量が減っているということを意味する。つまり、売り圧力が減っていると解釈できる。

(出典:Kraken Intelligence, Glassnode「取引所の保有量の変化」)
※赤が正味で減少、緑が正味で増加を示す。

実際、取引所から減少するビットコインの量は増え続けている。ビットコインの価格は11月につけた過去最高値から32%近く減少しているが、オンチェーン的には上昇トレンドは変わっていないことになる。

天井は14万ドル台?弱気相場の底は2万6300ドル

最後にビットコインの対数成長曲線(Logarithmic Growth Curve)を見てみよう。これはテクニカル分析だ。

ビットコインの対数成長曲線は、2011年1月からのビットコイン価格の推移において、レジスタンス(天井)とサポート(底)をつなげた成長曲線である。赤い対数の線を超えたら「買われすぎ」で、緑の対数の線を下回ったら「売られすぎ」と解釈できる。

(出典:Kraken Intelligence, Cryptowatch「ビットコインの対数成長曲線」)

現在、ビットコインは「買われすぎ」の水準から遠いことが分かる。2022年1月時点で、ビットコインのサポートは2万6300ドルから3万3800ドル、レジスタンスは11万4200ドルから14万6800ドルの間にある。このため、2022年も強気相場が続くと考えれば、相場の天井は最大で14万6800ドル、弱気相場になると考えれば相場の底は最悪で2万6300ドルになると予想できる。


千野剛司:クラーケン・ジャパン(Kraken Japan)代表──慶應義塾大学卒業後、2006年東京証券取引所に入社。2008年の金融危機以降、債務不履行管理プロセスの改良プロジェクトに参画し、日本取引所グループの清算決済分野の経営企画を担当。2016年よりPwC JapanのCEO Officeにて、リーダーシップチームの戦略的な議論をサポート。2018年に暗号資産取引所「Kraken」を運営するPayward, Inc.(米国)に入社し、2020年3月より現職。オックスフォード大学経営学修士(MBA)修了。

※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。


|編集・構成:菊池友信、佐藤茂
|トップ画像:Shutterstock

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